感想(サ行)

2009年10月02日

精神
2008年
アステア配給
06月13日シアター・イメージフォーラム他、全国順次ロードショー
http://www.laboratoryx.us/mentaljp/
上映劇場:http://www.laboratoryx.us/mentaljp/theater.php
監督のブログ:http://documentary-campaign.blogspot.com/
☆☆☆★3.9
監督:想田和弘選挙 [DVD]」『精神病とモザイク タブーの世界にカメラを向ける (シリーズCura)
製作:想田和弘
撮影:想田和弘
編集:想田和弘
製作補佐:柏木規与子
録音:想田和弘
08年釜山国際映画祭、ドバイ国際映画祭で最優秀 ドキュメンタリー賞。
マイアミ国際映画祭で審査員特別賞。
香港国際映画祭で優秀ドキュメンタリー賞を受賞。
ベルリン国際映画祭(09年)正式出品。
seishin

















これから見たいという方は読まないで下さい。

太目の中年女性が泣きながら話す。それを老人の医師が聞く。古い家の中で。その部屋を出ると、千の風になってを歌いながら背中をさする人。部屋で座って、気分がと。外に出るとベンチに座っている中年女性。カメラで撮るなら口紅つけれくればよかった。鬱は苦しい、死にたくなる、周りの人も自殺でいなくなってと語る。

眼光鋭いスキンヘッドの男性。

精神

まるまる太った中年女性が現れる。ショートステイで1日泊まると。ベッドに腰掛け、自宅に帰ると男の声が聞こえる。それは20年前から会っていない父親の声ではないかと語る。カメラを見ずに通院していたこと、自分が結婚し、通院できなくなり、子供を産み、赤子が泣き止まず手で口をふさいでしまったこと、離婚、自殺未遂、入院を繰り返したということを淡々と話す。

ずっと頭の中で声が聞こえる中年男性。一番最初の女性がなぜ通い始めたのか、生活の苦しさを語る。若い頃は体も売って凌いだ。生活保護申請も厳しくなり、障害者自立支援法も可決されようとしていた。薬の負担額も増える。やったな小泉と笑う。

食べ物を出す、牛乳を配る作業所も公的な援助なくしてやっていけない。診療所への患者の審査も厳しくなる一方だった。

勉強していておかしくなってしまって20数年以上医師とのつながりのある冗談を言う男。薬の配分をする女性。

等々。


外来の精神科診療所こらーる岡山の山本昌知医師と患者を撮った「選挙」の想田監督の観察映画第二弾。「選挙」は普通に撮りながらも滑稽さが全面に出ていたコメディ映画と化していた。デジカメで比較的低予算で撮ったドキュメンタリーと言える。今回はちょっと構えて見に行かなくてはいけない作品なのかなとも思った。そういう点ではもうそこにカーテンが生まれていたのかもしれない。劇映画、ドキュメンタリーでは物語る道筋に沿って見ればいいし、受け身で見てそれに従ってしまう人がほとんどだ。しかし、観察映画という手法では見るほうにどうとでも任されているので、映画によって観る側にある物を映されるし、透かされる。

重度の人が多かったかもしれないけれども、軽度の人もいた。不安で眠れなくて話を聞いて欲しくて精神科に通ったこともあるが、ほかの患者はほとんどの人が眠れない、職場のストレスなどで何とか精神を保っていた人が多かったようだ。日本では自殺は増え続け、患者も増え続け、メンタルクリニックは繁盛する。話を聞くのがうまい医者もいるんだろうけど、あまり聞いてくれる医者ではなかったので通うのはやめた。この映画ではかなりコアな人も登場する。自分の子を虐待して殺してしまった女性は淡々と語る。彼女にどうしてそんなことをしてしまったのかと責めることは出来ない。そこに反省、善はないように見えたからだ。
最後のほうに語っていた老人が健常者と通院者、患者の違いはそうないんじゃないか。みんな完全な健常者とは言えないというのはそうだとは思った。今の時代、何かしら不安で悩んでいて、ストレスがたまっていてという人は少なくないと思う。ただ、映画では精神科に通う患者、短時間だが、ホームヘルパーの手伝いを必要とするハンディキャップを持ったいわゆる障害者というのが混在していて、そこがちょっとどうなのかとは思った。そこを意図的に分けてしまえば観察映画としては成立しないのだが。

この映画には知らなかったものが特別に存在するものでもない。映画的に成功しているのかというとそうとも言えないような面もあるような気がする。でも、どう進んでいくのかをずっと凝視してしまう。金儲けには興味がない、患者の話をじっと聞く山本医師がいなかったらこの映画はまとまらないんじゃないか。

政権交代でようやく廃止になりそうな小泉政権時に成立した障害者自立支援という名の弱者排除の悪法そして、社会保障費の削減によってどれだけ苦しめてきたかということがわかる。精神的な不安に加え経済的な負担、不安を考えなければいけない社会とは何なんだと憤ってしまった。

あっさりと最後に出て来た患者3人が追悼という形で逝かれたことがわかってしまったということがまた衝撃的だった。



映画『精神』公式サイト



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2009年06月12日

ザ・ローリングストーンズ シャイン・ア・ライト
SHINE A LIGHT

2008年アメリカ
08年12月05日公開
http://www.shinealight-movie.jp/
東北新社配給
☆☆☆☆★4.5
監督:マーティン・スコセッシラスト・ワルツ(特別編) [DVD]」「タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]
製作総指揮:ミック・ジャガー
      キース・リチャーズ
      チャーリー・ワッツ
      ロニー・ウッド
撮影:ロバート・リチャードソン「アビエイター」「プラトーン」
編集:デヴィッド・テデスキ
カメラオペレーター:ジョン・トールほか「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」
出演:ザ・ローリング・ストーンズ
   ミック・ジャガー(ザ・ローリング・ストーンズ)
   キース・リチャーズ(ザ・ローリング・ストーンズ)
   チャーリー・ワッツ(ザ・ローリング・ストーンズ)
   ロン・ウッド(ザ・ローリング・ストーンズ)
   クリスティーナ・アギレラ
   バディ・ガイ
   ジャック・ホワイト三世
   ビル・クリントン
   ヒラリー・クリントン
   マーティン・スコセッシ
SHINE A LIGHT














2006年秋、ニューヨーク、ビーコン・シアターでのライブをスコセッシが撮ったドキュメンタリー。

クリントンがうざい。コンサート前に関係者が30人くらいに挨拶をする。そこは面倒くさそうに応じる。ここは歌とは関係なく面白い。

ストーンズのファンでもないけれど、好きになるライブだった。コンサートではこんなに近くで体感できない。ミック、キースのしわ、つば、唇の動きまでまじまじと見られる。と言ってももうおじいさん。じじいなのにミック・ジャガーは右に左に、前に後ろに手足、腰を自由に動かし動く、動く不思議な踊り、対してロン・ウッドはあまり動かずに弾いている。チャーリー・ワッツは変わらず叩き続ける。ジャック・ホワイトとギターで共演、カントリーっぽい歌、バディ・ガイとソウルっぽい歌、クリスティーナ・アギレラと歌い上げる。素晴らしい。エネルギッシュで凄い、凄い。
ところどころ、若い頃の映像も出て来て、若いなと素直に思った。一人ずつはギターもふらついて下手なんだけど、キースも語っているけど、ロンと二人で合わせて良いものになると。まさにそのとおりで不思議と良いものになっている。
イギリスのロック独特の重たい感じ、底抜けには明るくないものも感じた。アメリカのロックとどうも違うなというところがある。
素材が良いから普通に撮っても良いと思うが、音楽を熟知したスコセッシが撮っていてより良いものになっていると感じた。
映画館で見る利点で、日本で見ているのに2時間コンサート会場にいるようだった。最後は畳み掛けるように代表曲で盛り上げていく。サイコー!!



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2009年05月29日

セブンティーン・アゲイン
17 AGAIN

2009年アメリカ(ワーナー、ニューラインシネマ)
05月16日公開
http://www.17again.jp/
☆☆2
監督:バー・スティアーズ「17歳の処方箋 [DVD]
脚本:ジェイソン・フィラルディ
編集:パドレイク・マッキンリー
音楽:ロルフ・ケント
音楽監修:バック・デイモン
映画「セブンティーン・アゲイン」オリジナル・サウンドトラック
出演:ザック・エフロンハイスクール・ミュージカル/ザ・ムービー」「ハイスクール・ミュージカル」「ヘアスプレー DTSスペシャル★エディション (初回限定生産2枚組) [DVD]
   レスリー・マン
   トーマス・レノン
   ミシェル・トラクテンバーグ
   スターリング・ナイト
   メロラ・ハーディン
   マシュー・ペリー
17again















荒い画像で始まる。いかにも80年代。ハイスクールでバスケットをするマイク。ポイントゲッターでバスケット部で活躍する。水係で、オタクのいじめられっこネッドとも仲良しだった。大学のスカウトが来ている中で試合が行われようとしている時に彼女のスカーレットに子供が出来てしまったと告げられ試合を投げ出し、バスケットを諦めて家庭を築くことに決める。
20年後、ネッドの家に居候している製薬会社に勤めるマイクは後輩の女性にもポストを抜かれて荷物をまとめて出てくる。自分が通っていた高校に人気選手だったかつての栄光を示す写真、トロフィーが飾られているケースを懐かしそうに見つめる。娘と息子にも鬱陶しがられ、妻とも離婚調停中。車で走っていると橋から飛び込もうとしている老人を見つけ、橋から川を覗き込み落ちてしまう。泥まみれのスーツを流して鏡を見ると17歳の自分の姿が映っていて叫ぶ。ネッドが起きてきて泥棒と間違って格闘になる。それからマイクは自分がマイクということを隠してネッドの息子マークとして高校へ入り、バスケットの選手になり子供が出来たことで諦めていた夢を実現しようとする。いじめられっこの息子に自信をつけさせ、娘には変な虫がつかないようにと父親心を顕にして奮闘する。
主人公マイクは現在のトップアイドル、ザック・エフロンが演じる。

軽めの作品も見てみようと思った。予想通り女性客が多かった。しかし、映画はあくまで主人公が中心の映画になっていて、どっちかと言うと男、おっさんが共感しうるものとなっている。妻も気持ちの変化が伺えない。軽く楽しめるようなものではあった。デフォルメしたオタクのネッドのところで笑いが多々起こっていたが、さほど笑えるものではなかった。ここは低レベル。

最大の難点は17歳に戻る理屈が曖昧なこと。何か薬品などの化学的変化とか、そこのところがあまりにもご都合主義が過ぎる。あまりにも唐突過ぎる。最後のほうも。
肉親が自分を愛してしまうところは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を思い出す。けれども、普通に見れば妻が高校生であるマイクを愛するのはおかしいが、彼が妻を愛してしまうところは普通なので、そこの差異を面白がるようなポイントを作れなかった。妻とも子供たちともぎくしゃくしていたのが、17歳の仮面を被ることでそんなにうまいこと会話を交わす事が可能なのかという疑問がいつもつきまとった。しかし、息子、娘を何とかしようと奔走する姿は親の気持ちで見てしまう。17歳に戻ったんだからもてようと頑張ってがんがんやりまくってというようなことはしない。あくまでも優等生を通す。ちょっとそれはないな。

ザック・エフロンはなかなか役にはあっていたように思う。年を取るとマシュー・ペリーになってしまうのだが、現実にはザックが年を取るともっと激しく変化しているようにも思う。アイドルがどういう方向にシフトしていくのかという作品とは別の興味もあった。美人妻を演じるレスリー・マンは高校生の頃を演じる女優よりも魅力的だった。彼女は実生活では男のためのラブコメディを作らせたら右に出るものはいないジャド・アパトーの妻だ。ジャド・アパトーのように馬鹿なんだけど、現実的な引っかかりを持ったところが欲しかった。17歳に戻っても頭の中はそのままだから、もうリセットすることは無理なんだというのは終着点は良かった。たらればでと後悔することは多いけど、戻ったとしても、いや、戻りたい過去、栄光なんてないからなあ。


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2009年05月20日

スター・トレック
STAR TREK

2009年アメリカ(パラマウント)
05月29日公開
http://startrek2009.jp/
☆☆2
監督:J・J・エイブラムスM:i:III」、「クローバーフィールド/HAKAISHA 」製作、「LOST」企画、製作
製作:J・J・エイブラムスほか
原作:ジーン・ロッデンベリー
脚本:ロベルト・オーチー
   アレックス・カーツマン
撮影:ダン・ミンデル
編集:メリアン・ブランドン
   メアリー・ジョー・マーキー
音楽:マイケル・ジアッキノ
出演:クリス・パイン
   ザカリー・クイント
   エリック・バナ
   ウィノナ・ライダー
   ゾーイ・サルダナ
   ジョン・チョー
   レナード・ニモイ「スター・トレック/宇宙大作戦」
startrek















攻撃を受ける宇宙艦隊。敵から破壊され続ける。指揮をしていた男のお腹が大きい妻は脱出し、男は自ら艦隊に残って犠牲となり800人の命を救った。脱出中に生まれたのがカーク。カーク船長の若き日が舞台になっている。耳の尖ったバルカン人と地球人の混血スポックの葛藤。一気に22年後。カークは黒人女性をくどいて男たちとバーで大喧嘩。そこに集まっていたのは艦隊の隊員たちであった。カークは艦隊に志願する。けれども、カークは士官のスポックが作った試験のシステムを改ざんして不正行為をし、謹慎処分になるが、緊急事態で出動のエンタープライズ号に乗り込む。

全くトレッキーでもなんでもないけれども、テレビでは見た事がある。改めてみるとスポックはこんなに君が悪いもんだったのかと思った。テンポはいいし、スピーディー、宇宙での銃撃戦。わかりやすいけれども、味わいはない。カークは筋肉質で軽い。マリオネットのような顔だった。J・J・エイブラムスだから、娯楽性に徹したのはわかる。レナード・ニモイを登場させて過去のシリーズへのオマージュ的な部分もあるんだけど。どうもすっきりとしないオリジナル版にはまらなかったというのが娯楽性を重視した作品を見ることで気付かされた。
杓子定規に論理思考なスポックと対照的に直感を信用するカーク、だけれどもカークに頼っても大丈夫かというような人物なような気もする。

アメリカでスポックと言うとオバマ大統領。黒人と白人の混血というところでもという指摘もあるのだろう。大統領も今作をホワイトハウスで見たそうだ。


 このシリーズは66年にスタートして以来、宇宙を舞台にしながら、人間について哲学的な問いを投げかけてきた。戦争、環境、宗教、性差別、人種差別、動物愛護、性的志向など過去40年の論点はほぼ網羅した。例えば、テレビシリーズ『宇宙大作戦』67話「キロナイドの魔力」には、その外見のために不当な扱いを受ける奴隷が登場する。カーク船長が彼に言う。「私の故郷では、体系や肌の色が問題になることなどない」この回が放映されたのは68年。公民権運動真っ盛りの時代で、キング牧師が暗殺されて7ヶ月半後のことだ。この会には、テレビ初の黒人と白人のキスシーン描写もあった。
 最新の映画版は違う。哲学的というより、筋肉系のノリだ。ややこしい倫理的な問題は影を潜め、アクションシーンと特殊効果ばかりが目立つ。政治や道徳に絡む要素は消えた。これまでのシリーズは争いを批判したり、寛容さを説く事が多かった。ところが、今回は醜い復讐劇が渦巻き、大爆発がやたらと起こる。
SFはいつも、製作された時代を映し出す。「スター・トレック」が初めて放映された頃、人種差別や女性解放、ベトナム戦争、冷戦が大きなテーマだった。ウフーラ通信士は、テレビ初の主要な役を与えられた黒人女性。米ソ冷戦時代に、ロシア人クルーのパベル・チェコフがいた。
惑星連邦の「艦隊の誓い」は、威勢人文化に干渉してはならないと定めていた。それはベトナム戦争批判だった。(『Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2009年 5/27号』マーク・ベインの映画評より抜粋)


外交で強硬路線のブッシュが終焉し、オバマの対話路線に変わりつつある中で「艦隊の誓い」が出てくるスター・トレックがこの時期に作られるのは時代とリンクした。だが、今の時点で枠組みだけが同じなので、なぜたどたどしいロシア語訛りが酷くてコンピューターが反応しないほどの英語を話すロシア人がクルーにいるのかの必然性が全くない。社会的背景を反映していたシリーズとは違い、そういうものがほぼなかった。その点で不満が残る。現実を反映すると、艦長はカークからスポックへとバトンを渡すとなってしまうが。

新生のスター・トレックとして考えたほうがいい。何も考えずに見る夏休み向け超大作というのにはぴったり。最後に流れてくるテーマを聞くと、ウルトラクイズだと思ってしまった。どのくらいの人が「スター・トレック」と聞いてピンとくるのかという点も非常に気になる。



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2009年04月08日

スラムドッグ$ミリオネア
SLUMDOG MILLIONAIRE

2008年イギリス、アメリカ
04月18日シャンテ・シネほか全国順次ロードショー
http://slumdog.gyao.jp/
Fox Searchlight Pictures、ワーナーほか
ギャガ・コミュニケーションズ配給
PG-12指定
☆☆☆☆3.9
監督:ダニー・ボイルトレインスポッティング」「28週後... (特別編)
製作:クリスチャン・コルソン
原作:ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様
脚本:サイモン・ビューフォイ「フル・モンティ (Blu-ray Disc)
撮影:アンソニー・ドッド・マントル
音楽:A・R・ラフマーン「スラムドッグ$ミリオネアAR Rahman & Madhumitha - Slumdog Millionaire (Original Motion Picture Soundtrack)(「ムトゥ踊るマハラジャ」「エリザベス:ゴールデン・エイジ」「ボリウッド~インド映画ベスト・ヒット」)
主題歌:A・R・ラーマン「Jai Ho」A. R. Rahman, Sukhvinder Singh, Tanvi Shah & Mahalaxmi Iyer - Slumdog Millionaire (Original Motion Picture Soundtrack) - Jai Ho
出演:デヴ・パテル
   マドゥール・ミタル
   フリーダ・ピント
   アニル・カプール
   イルファン・カーン
   アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール
   アズルディン・モハメド・イスマイル
   ルビーナ・アリ
アカデミー賞作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞、歌曲賞(「Jai Ho」)、音響賞、編集賞(8部門)受賞
slumdogmillionaire
















クイズ・ミリオネアであと1問で2000万ルピー。彼がここまで来れたのは?

A:イチチキをやった。
B:運がよかった。
C:天才だった。
D:運命だった。

ジャマール。コールセンターのお茶汲み。スラムで育った奴が何で答えられるのか、ずるをしているんだろうと警察は水責め、電気で拷問する。しかし、いかさまはしているないと答える。少年時代になり、広場でクリケットをする子どもたち。シャツを来た子がアップに。

SLUMDOG MILLIONAIRE

追っかけられて兄のサリームと走る、走る。

ミリオネアの場面。ある映画の主演俳優は誰?

少年時代、肥溜めに落ちながらもジャマールは俳優にサインをもらう。



サリームとジャマールが川で遊んでいると、向こうからイスラム教徒を殺せと暴徒が襲ってきて、母親が殺され、転々とする。同じく親のいない少女ラティカと出会う。ある日、子供たちに優しくしてくれる男が出て来たのだが、実は彼らは同情させるために子供の腕を切ったり、目を潰して物乞いをして商売をしている奴らだった。

ここまでで数十分で一気に語りきる。パワーがみなぎっていて凄さを感じる。どんどんと話は展開していく。彼らはどうなっていくのかと引き付けられていく。
いきなり、警察の拷問シーンで目を背けたくなるような重たいシーンから始まる。次には幼少期の主人公のジャマールが肥溜めに落ちて糞尿にまみれる。棒を持った男たちが殺しに来て、火を放ち火達磨になる人も。目を潰される子供。とにかく現実の厳しさを突きつけていく迫力には驚くのみだった。そこに様々な伏線を散りばめているうまさもある。

疾走シーン、映像のうまさはダニー・ボイルの良い面が出ていたと思う。「トレイン・スポッティング」以降は「ザ・ビーチ」にしても全く面白さが出せていなかったが、少し復活の兆しという感じがした。ただ、宗教対立、スラム、現実の厳しさの描き方が「ザ・ビーチ」の時と同じようにどうも西洋からみたオリエンタリズム、インドってこんなんでしょうという感じもしないでもなかった。こんなにうまいこといかんだろうという面も多々あった。中盤から終盤近くのジャマールのラティカへの執着がたるいというか、この辺は非常にリズム感が良くなかった。

最後はA・R・ラーマンのJai Hoのミュージカルシーンで終わる。唯一インド映画らしい場面で希望、明るさを与えてくれる演出だった。江戸木純さんが配給した「ムトゥ踊るマハラジャ」が流行った時の音楽担当だったラーマンかと嬉しくもなった。終わりまで力ずく、勢いで押し切ったのは凄いの一言だった。

ただのフィクションなのだけれども、最後の落ちというのはインドにカースト制度がある所以とも思える怖さを孕んでいるようにも見えた。

この映画は最高傑作かと言うとそうではない。藤原帰一さんが書いていたけれども、アカデミー賞はその年のアメリカ人の心情を表していて支持されている映画が作品賞に選ばれるのではと。まさにそのとおりでオバマ大統領が誕生した今年のキーワードは希望、アメリカ人にはそれしかもう残ってないのだから。あと、インド版「オリバー!」だとも言っていた。それもそのとおりで、あれってアカデミー賞作品賞だったのと後に言われてしまうかもしれない。世界大不況でなければ、この作品が取っていたのかは些か疑問である。「グリーン・デスティニー」のように外国語映画賞止まりに終わっていたのだろうと思う。

エンターテイメントとして十分に楽しめる作品だった。


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マルチバイ特価(税込) : ¥1,757
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2008年09月01日

シャカリキ!
2008年ショウゲート
09月06日公開
http://www.shakariki-movie.com/
☆☆☆2.7
監督:大野伸介
原作:曽田正人シャカリキ!
脚本:丑尾健太郎
   水野宗徳
音楽:半沢武志「HANZAWA TAKESHI presents MUSIC FROM THE MOTION PICTURE「SHAKARIKI!」
主題歌:Sonar Pocket『Promise
出演:遠藤雄弥「ジュブナイル
   中村優一
   鈴木裕樹
   南沢奈央
   小林裕吉
   柄本明
   中越典子
   温水洋一
   原田泰造
shakariki
















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2008年04月30日

最高の人生の見つけ方 THE BUCKET LIST
2007年アメリカ
5月10日公開
2007年アメリカ
http://wwws.warnerbros.co.jp/bucketlist/
評価:☆☆2星
監督:ロブ・ライナー「ミザリー」「スタンド・バイ・ミー」
脚本:ジャスティン・ザッカム
撮影:ジョン・シュワルツマン
編集:ロバート・レイトン
音楽:マーク・シェイマン
出演:ジャック・ニコルソン
   モーガン・フリーマン
   ショーン・ヘイズ トマス
   ビヴァリー・トッド バージニア
   ロブ・モロー
THE BUCKET LIST
















試写会場はかなりの混みようだった。

自動車整備士をしながら質素だけれども堅実に生活しているモーガン・フリーマン演じるカーターは物知りだった。ある日、末期ガンであることを電話で知る。一方、巨万の富を築いたジャック・ニコルソン演じるエドワードも自分が買収した病院に脳腫瘍の手術のため入院していた。エドワードは1人部屋はなくせという自分で言った経営方針のために2人部屋に入らざるを得なかった。その部屋に入院していた患者がカーターだった。ともに余命があまりなかった。カーターは大学時代に哲学科の教授から聞いて死ぬまでにしたいことリストを書いていた。それを目にしたエドワードはリストに書かれたことをやろうとカーターを誘い旅に出る。

緩めのコメディが得意なロブ・ライナー監督の作品。最近あまり当たりがない監督である。ぬるま湯のような話で飽きずには見れるが、ジャック・ニコルソンの怪物のような姿と傲慢な感じは役にぴったりで演技では見せてくれたが、あとに残るものは何もなかった。
カーターは黒人でブルーカラーで実直で家族思い。エドワードは白人で大金持ちだけど傲慢で嫌な奴で、妻とも離婚し、娘ともうまくいかない。あまりにも単純に対照的過ぎる。死ぬまでにしたいことも病気ではなくて元気な人が考えそうなことが多い。やたらと世界の有名な観光地が出てきて、しかもセットで撮りましたというちゃちな感じがした。互いに死を前にしての分かり合える友情というものはわかったが、死を迎えようとしている者の心情が伝わってこなかった。
コーヒーのコピ・ルアックの話も最初から読めいてたし、こうなるだろうなという展開で驚きがなかった。
病気になって死を前にしたからこそ生への執着が芽生えてやりたいことをリストアップした。それを莫大な金を使って叶えていってそこからの話の流れが普通すぎた。
死ぬまでにしたい10のことみたいな話なのにこの邦題では何のことだかわからない。


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2008年04月16日

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド THERE WILL BE BLOOD
2007年アメリカ
4月26日公開
公式サイト
評価:☆☆☆☆★4.5星
PG-12指定
監督:ポール・トーマス・アンダーソンパンチドランク・ラブ」「マグノリア 」「BOOGIE NIGHTS
製作:ジョアン・セラー
   ポール・トーマス・アンダーソン
   ダニエル・ルピ
原作:アプトン・シンクレア『石油!
脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
撮影:ロバート・エルスウィット
プロダクションデザイン: ジャック・フィスク
編集:ディラン・ティチェナー
音楽:ジョニー・グリーンウッド「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
出演:ダニエル・デイ=ルイス父の祈りを」「ボクサー(ユニバーサル・セレクション第4弾) 【初回生産限定】」「マイ・レフトフット
   ポール・ダノリトル・ミス・サンシャイン
   ケヴィン・J・オコナー
   キアラン・ハインズ
   ディロン・フリーシャー
アカデミー賞主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)受賞。
ゴールデン・グローブ賞主演男優賞(ダニエル・デイ=ルイス)受賞。
therewillbeblood













かなり混んでいた。年配の人が多く、男性の姿が目立った。2時間40分近くある大河ドラマ。

1900年代。穴を掘って、ダイナマイトを仕掛けて爆破。また穴に下りて行く。銀が見つかるが足場が転落して足に怪我を負う。男は山師のダニエル・プレインヴュー。時代はゴールドラッシュで、ダニエルは子供を現場に連れて行き、石油採掘に情熱を注ぐようになる。ある青年から油田が眠っている牧場があるとの情報を買う。その一帯を買い占めようとする。ダニエルはその村に行き、土地を買占めて油田開発をする。情報を提供した家の息子は村人に慕われているオカルティックなキリスト教福音派の牧師で、何かとダニエルともめていた。

ダニエル・デイ=ルイスの演技なくして成立しない映画だった。すぐにかっとなり、感情が豊かな主人公は決して好きにはなれないけれども、大袈裟で非常にインパクトがある。牧師を演じたポール・ダノも好演で、ダニエルとのやりとりは凄まじく、面白くて、笑いもある。
監督はポール・トーマス・アンダーソン。彼がこれからの映画を引っ張っていく人。スピルバーグ、スコセッシはもう衰えている。PTAはどの作品もこてこてでしつこい。人物設定がしっかりしている。緊迫感を出している音楽も良い。主人公の視点から見ているので非常にわかりやすい。一人の男を通して社会、時代を見せきった。

最後のロバート・アルトマンに捧ぐという言葉。PTAを有名にした「マグノリア」はアルトマンが得意とする群像劇。そこからこういう作品へと移って来た経緯かと改めて思った。



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