2017年02月19日

第89回アカデミー賞 作品と監督部門を語る!

2017/02/16(木)

エンターテインメントを楽しむための深掘りトークプログラム「WOWOWぷらすと」

日本時間の2/27(月)に迫った第89回アカデミー賞。
今年のノミネーション作品を徹底解剖!
本日は作品賞と監督賞について語ります。

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MC:中井圭

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ゲスト:宇野維正、松崎健夫



宇野:作品賞で今年は何でノミネートされているのかというのが1本しかなかった。

松崎:メル・ギブソンは俳優が監督の先駆け。受賞監督はロバート・レッドフォード、ケヴィン・コスナーと3人目だけれども俳優が監督した作品に偏見はなくなった。当時の「ブレイブ・ハート」は本命ではなかった。



メッセージ」の予告編



宇野:ドゥニ・ヴィルヌーヴ。「ブレードランナー 2049」「砂の惑星」が控えている。「メッセージ」はメジャースタジオではないところで作られたSF作品。それで評価が高くて興行的にも凄く成功した。デヴィッド・フィンチャー以来の稀代の映画監督。

宇野:トランプが当選した次の週に公開されてたけど、この作品を見ろというほかの作家が言っていた。異文化とどうやって分かりあうのかというテーマ。原作者のテッド・チャンは文学的なSF小説家。読まないで見たほうが良い。



松崎:映画見てから読むと1ページ目から号泣しちゃう。読んだ時には想像つかない。図説までしているのに交信しているやり方は想像しかない。それが映画になっている。

宇野:小説が読みたくなる。映画で全てが説明されているわけではないので理想的な補完関係がある。「未知との遭遇」「コンタクト」にも引けを取らない。去年、東京国際で見て来年のベスト決まったなと思いました。





フェンシンズ」。まだ日本公開は決まっていません。

松崎:舞台版の戯曲は読みました。庭にフェンスを建てる。戯曲自体は昔に書かれていますが、フェンスを建てるということは今のアメリカの国境にフェンスを建てるということと結びつけてしまう。舞台は1950年代。黒人だったために白人に仕事を取られてしまうのが移民に仕事を取られたと言っているトランプ支持者に重なる。(ノミネート時期との)タイミングが良かった。隣の家との境目を作りたいと塀を作る。1950年代はアメリカにとって良い時代だった。マイカー、マイホーム、洗濯機でこれから良くなっていくという時代。しかし、黒人にとっては公民権運動前で苦労していた。今年だからこそという意味合いがある。

ハクソー・リッジ」沖縄地上戦が舞台の実話。主人公はキリスト教を信仰しているから戦いには加わらないと言い、衛生兵として助ける。

宇野:「沈黙」と結構似ている話。だったら「沈黙」じゃないのという話なんだけど。

松崎:ジョン・ウーの「ウィンドトーカーズ」もそうですけど、日本が敵役で日本人が見ると気分が良くないですけど、この作品だと相手があまり日本人か分からない。アメリカの視点だけど、相手が日本人かどうかではなくてそこでやったことについて焦点が当たっている。

宇野:好き嫌いじゃなくてこれには一つだけ言っておきたいのはほかのノミネート作品は映像が新しい表現で「メッセージ」は音楽が凄い。「ハクソー・リッジ」は80年代の映画だった。沖縄戦の日本人兵が出てくるシーンで尺八ですよ。まだそんな音楽を付ける人がいるのか。いつの話?音楽一つとっても。

中井:これが実話なのか。今、何で選ばれたのかは分からなくもない。

宇野:アカデミー賞実話好き過ぎ問題。「ハクソー・リッジ」「Hidden Figures」「ライオン」。9本のうち3本だから今年は正常化したけど、半分近い時もあって。実話で良い映画もあるけど。実話映画がエンドロールで本人出がち。「ハクソー」と「ライオン」は。役者の人が本人演じると褒められがち問題。実話と同じくらいだったら、フィクションを応援したいんだけどね。アンドリュー・ガーフィールドは素晴らしい。

松崎:「プライベート・ライアン」とは違う戦闘シーン。ホラー映画かと思うくらい。

宇野:「ライオン」は時間配分に驚く。バランスが。


最後の追跡」日本ではNetflixで配信。インディーズ映画で一番稼いだ映画。銀行強盗を追いかけるテキサスレンジャーの話。現代の西部劇。

松崎:下層の人たちを描いている。お金に困っている人たち。自分の家を担保にしてお金を借りる。それが破綻していて。リバースモード。

宇野:テキサス、南部の白人のトランプ支持者が多い、今のアメリカを反映している。これは面白いんですよ。ユーモアが。9本の中で凄く楽しい。ウィットとユーモアに富んでいて。眉間にしわを寄せて見る映画ではない。アメリカンニューシネマのオフビート感がある。

中井:無常感も入っていて。

宇野:脚本家がヴィルヌーブの「ボーダーライン」のテイラー・シェリダン。元役者。まだ2、3本しか書いていないのに天才だろ。監督デビューもしている。


Hidden Figures」(今はまだ日本公開は決まっていない)。アメリカでダントツに当たっている。まだ入っている。

松崎:「ライトスタッフ」のミッションを成功した裏に彼女たちがいた。アカデミー賞のノミネーション対象は12月25日公開だとぎりぎりOKというのをやった。アカデミー賞発表後に拡大公開。綺麗に当たった作品。

宇野:主人公は黒人女性で監督は白人。我々が白過ぎるオスカーと言ってられない。白過ぎる日本の配給会社というのがずっとあるんですよ。今年だけではなくて長年、黒人が主人公だから当たらないだろうとやってきた積み重ね。映画配給は純粋は商業行為だけではない。もちろんボランティアでもないけど。やっぱり大きな配給会社は意味がある。全ての映画を配給できないけれども、アカデミー賞作品賞にノミネートされて一番当たっている作品を配給する義務がある。凄い大きい配給会社なんだから。ほかのところが、角川だとか一年近く遅れて配給のお金が安くなって公開はされるんだろうけど、ノミネートされたタイミングで公開されないのはshameですよね。入らないようにしたのもそういう蓄積で、無邪気なのも広義の差別意識ですよ。扱っているのは文化ですよ。

松崎:2000年代タイラー・ペリーの映画はヒットしているけれど、日本に入ってこなかった。黒人の。主演でやったアクション映画でさえ入ってこない。DVDにもならない。アダム・サンドラー、ウィル・フェレルの映画が入ってこない。

宇野:コメディが入らないのと黒人の映画が入らないのはちょっと違うな。無邪気さにおいて。

松崎:どっちも見られていないという意味では。

宇野:僕らの時代ではスパイク・リーの「Do the Right Thing」。音楽と政治をミックスしてムーブメントが日本に届いた。『CUT』とか。ファッションと音楽に近い人しか届いていなかった。プリンスが音楽をやった「ガール6」でも公開されなかった。ファッションとして消費しちゃって。スパイク・リーですら継続的に配給できていない。責任があると思う。音楽誌は責任持つぜ。責任持たない音楽誌は駄目。最初に注目して売れなくなった新人を音楽誌は何年も推したよ。推したんだもん。映画は一期一会でスタッフも配給会社も変わっちゃうけど。組織でずっとやることは出来ないけど、文化ってそういうことじゃん。


中井:その考え方には賛成ですけど、配給会社の事情をよく知っているので、もし買って当たらなかったら、どこが責任を持つの。アプローチとして文化支援で公的なものが入ってきますとしないとビジネスでもあるので。

宇野:僕が怒っているのは権利を塩漬けにすることなんです。配給権を持っているところは横流しにして下さい。塩漬けにするな。黒人の映画は表現が今現在でその時に観る映画。フレッシュさが映画を観る価値。ストリーミングでも何でも見せてくれ。

松崎:アカデミー賞で盛り上がったら1年後には見られるのかな。

宇野:「ムーンライト」はアート映画。もしこれが公開されなかったら今の10倍怒っていた。



ラ・ラ・ランド



宇野:GAGAがここまで盛り上がっていない時に買い付けて。アメリカでは評価されているけど、作品の性質上そこまで当たっているわけでもない。日本の劇場関係者に見せたらやりたいと日本ではヒットすると。席巻する前の段階で。公開規模はえっという程。しかもIMAXでの上映までも。絶対見たいと思うし。既に盛り上がるしかない映画なんだよね。

中井:初週スクリーン数250。

松崎:僕は監督、主演女優、撮影、編集とか一番たくさん獲る映画だとは思うけど、作品賞は。今のアメリカの状況で、ゴールデン・グローブ賞でさえ役者がああいう状況だと考えた時にこういう状況だからこそハリウッドの楽しい映画というなら一択ですよ。トランプのごたごたがあって様々な問題を描いている作品がある中で過去のアカデミー賞では別の物ということがある。「クラッシュ」の時は「ブロークバック・マウンテン」が最有力だったけど、その時はゲイのカウボーイの話に与えるのは早いんじゃないかと言われて、作品賞と脚本賞は「クラッシュ」になったように、今回のアカデミー賞もきな臭い感じがして単純に「ラ・ラ・ランド」が「ベンハー」の13部門の記録に並ぶということはないと思います。

中井:結果、蓋を開けたら、監督賞、作品賞を獲っているでは。

宇野:その論理の中で違和感があるのは僕は世の中を変えたいん人ですよ。グラミーでアデルが保守の代表みたいに、アメリカ人でもなければ若いし良いし、悪いもんじゃないから攻めてやるなよ。「ラ・ラ・ランド」は「ムーンライト」程政治性もないけど、デイミアン・チャゼルが監督賞を獲ったら史上最年少でしょう。史上最年少記録。今年ははっきり言うと、史上初の黒人で獲る「ムーンライト」バリー・ジェンキンズの対決だと思います。政治性抜きにどっちも最高じゃんというスタンスかな。そこに絡んでくるなら「マンチェスター・バイ・ザ・シー」。それが素晴らしいの。そういう意味ではフレッシュだし若いし。

松崎:「ラ・ラ・ランド」はすげえ良い映画ですから。久しぶりに映画らしい映画を見た。

宇野:去年の「スポットライト」も獲っていなかったらもっとヒットしていなかったから効果はあるんだよね。


宇野:「ラ・ラ・ランド」がベストのタイミングで公開されたのはGAGAが頑張ったんです。ほかもベストのタイミングに当てろって。だって5月とか6月公開って訳わかんないじゃん。インディペンデントなら仕方がないけど、メジャーな映画で公開が遅いのは職務怠慢です。本当にやめて下さい。誰もハッピーになりませんから。「沈黙」は狙っていましたよ。外れたのはあるんだけど。オスカー候補なのにほかの作品より遅いのあるんだから。



LION/ライオン 〜25年目のただいま〜



松崎:ラスト分かっているのに凄く面白かった。タイトルに書いてある。そこに辿り着くまでどう描かれるか。オーストラリア映画でアカデミー賞に引っかかったことが凄いこと。

宇野:「インドの子供がルーニー・マーラの彼氏になるまで」。

中井:格差社会の話。

宇野:ニコール・キッドマンが里親の母親役で助演女優賞候補で。それだけではなくて孤児を引き取る偽善性にもメスを入れていて。メインの主人公以外の兄弟の描き方とか、大学の同級生の描き方とか凄い細かい。精密な映画です。

松崎:多角的視点がある。最近の国際映画祭で疑似家族を描いたものが多い。血縁関係よりもそうではない人間関係のほうが重視しないといけないという現れが映画に出ている。そのことを描いているけど、お母さんの血縁のことも描いてます。貧富のことを描いたり、養子の問題も描いている。

宇野:本当に良いんだよね。世界最悪の迷子を自分の子供時代を見る。上手いんです。撮影がグレイグ・フレイザー、「ローグワン」「フォックスキャッチャー」。撮影綺麗。当たって欲しんだよな。本命ではないんだけど。あと、誰も見ても面白い。去年の「ルーム」枠かもしれない。僕は作品としては評価していないけれども、誰が見ても面白い。


マンチェスター・バイ・ザ・シー



宇野:倉本聰の脚本を小津安二郎が監督をしたような映画。誉め言葉です。

松崎:「ハクソー・リッジ」と同じ性質があって、メル・ギブソンの監督作は自己犠牲を描いていて、やらかしていたけど、再評価されてカムバックした。「マンチェスター〜」もやらかした人たちが関わっている。ケイシー・アフレックは役者としては注目されなかった。最近評判が悪かったのは「容疑者ホアキン・フェニックス」を監督した。内容が実は嘘でしたというので世間が怒って干された。久々に良い演技をして復活した。監督のケネス・ロナーガンは「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」(日本未公開)でアカデミー賞脚本賞、主演女優賞にノミネートされて注目された。次回作は「マーガレット」が揉めに揉めて4年間お蔵入りした。そういう扱いの人が今回カムバックした。事故によって苛まれた人とか兄弟の折り合いをどうするかの話をこれまでずっと撮っている。自分の持っているテーマを温存しながらこの映画で新たな評価を得ている。

宇野:ケイシー・アフレックは干された後も地味に「セインツ」「ファーナス」と良い映画にも出ているんですよ。良い作品には出ているけれども、大きな作品には出ていなかった。
 凄い良い映画です。


ムーンライト



宇野:スパイク・リーの後に90年代ギャングスターラップが音楽シーンを席巻する。黒人映画ちょっと盛り上がった。劣悪な環境で育って大人になっていく話はあったんだけど、アート映画的な風格がある。LGBTの見方。ヒップホップはマッチョイズムでホモフォビアも多くてLGBTと対立する概念だった。アートの要素とLGBTの要素が「ボーイズ'ン・ザ・フッド」をアップデートした。フランク・オーシャンというゲイのヒップホップから出て来た大カリスマになっていますけど、フランク・オーシャンの半生記を見せられているようで。

松崎:監督は「Medicine for Melancholy」を撮っていてほとんど撮っていない人がノミネートされて。カラコレで視覚的に画を作っている。トーンを揃えている。黒人の映画でこういう色合いの映画は見たことがない。

宇野:人の色は光の当て方次第でどうにでも解釈できる。人種だったり、性別だったり。ムーンライトは光で照らすもの。我々の視線。問いかけてくる。アーティスティックにやっている。デイミアン・チャゼルはとんでもない奴なのでどんどんどんどん凄い映画を作ると思います。バリー・ジェンキンズは良すぎてこれを超えることが出来るのかと思った。素晴らしい一発屋の気もして。

監督賞

□ 「メッセージ」 ドゥニ・ヴィルヌーヴ  
□ 「ハクソー・リッジ」 メル・ギブソン  
□ 「ラ・ラ・ランド」 デイミアン・チャゼル  
□ 「マンチェスター・バイ・ザ・シー」 ケネス・ロナーガン  
□ 「ムーンライト」 バリー・ジェンキンズ


宇野:「ラ・ラ・ランド」。「アナ雪」「君の名は。」とつながるんだよね。新海さんが「君の名は。」はミュージカルだと言っているけど、これの爆発が見たいんで。監督もデイミアン・チャゼル。予想は「ムーンライト」、監督はデイミアン。

松崎:監督はデイミアン・チャゼル。「ラ・ラ・ランド」になるんだと思いますけど、そんな能天気なことでいいのかと「ムーンライト」に流れるかもしれないという二択です。

中井:作品賞、監督賞は「ラ・ラ・ランド」。前哨戦も見た結果。

宇野:「ラ・ラ・ランド」がアカデミー賞を獲って馬鹿当たりすれば、授賞式後何か月後に公開という今年みたいなことはなくなると思いますよ。監督賞は2009年のキャスリン・ビグロー以来アメリカ人が獲っていない。ドゥニはカナダ人でメル・ギブソンは獲らないのでほかの3人はアメリカ人なので8年ぶりでしょうね。

(2017年02月16日「WOWOWぷらすと  第89回アカデミー賞 作品と監督部門を語る!」より抜粋)





黒人映画とコメディ映画が劇場公開されないというのは事実だけれども、欧米、アジアほか世界の映画がこれだけアート系映画館以外でも上映されている国というのは少ない。メジャーの配給会社がアカデミー賞の話題に合わせて公開時期を調整しないというのは怠慢かもしれない。



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