2011年10月14日
チェルノブイリ・ハート(感想)
チェルノブイリ・ハート
CHERNOBYL HEART
2003年米
8月13日公開
公式サイト
PG12指定
☆☆☆☆
監督: メアリーアン・デレオ
製作: メアリーアン・デレオ
2003年度アカデミー賞ドキュメンタリー短編賞受賞
最初に今回原発事故が起こった日本のみなさんへと監督からの詩人の言葉が引用される。オリーブの木を植え続けないといけない。生き続けないといけない。
チェルノブイリ原発事故は1986年4月26日に起きた。軍を大量に投下し作業をした。何万にかの死者が出た。(数字は忘れてしまった)。ウクライナ、ベラルーシ、ロシアが放射能によって汚された。16年後、防護服を着てマスクを装着して車に乗り原発の数十キロ圏に入る。石棺はしたが、時が経ち劣化していて放射能が今も漏れ出している。村から老人がよく来たねと声をかけてきた。この地域は年寄り以外は居住が許されない地域なのだ。
ベラルーシ、セシウムで汚染された地域。病院では甲状腺ガンの手術を待っていたり、手術をした若者が入院していた。友人など甲状腺ガンにかかっている人がかないいると話す。医者は原発事故前はこんなに多くはなかったと語る。一人の少年がホールボディカウンターで体内のセシウムの量を計測する。量が多いと医者は言い、きのこ、鹿肉、ベリー類などは食べていないだろうねと家にあったベリー系のジャムを計測するとセシウムが多く検出される。
ミンスクでは奇形児が集められた病棟がある。成長しなかったり脳性麻痺があったりする子供がたくさんいて永久にそこで暮らす。また、奇形児を遺棄する親がいて引き取る施設である。奇形児の出生率がほかの周辺国の25倍に増え、健常児が生まれる確率は15〜20パーセントになりほとんどが何らかの障害を持って生まれる。原発事故の影響だろうと医師は語る。映画では言われてはいないが、その健常児もいつ病気になるかわからないということもあるだろう。
足が捻じ曲がった子供、脳が頭に収まらずに飛び出た子供、口がうまく形成できないまま生まれた子供、手足ががさがさになって切断しなくてはいけないかもしれない子供、脳に水が溜まり頭が大きくなり脳がほとんど機能していない子供、腎臓が肥大して立てない子供。子供たちにおもちゃを配る監督。この現実を見ていつも涙をこらえているのと言う女医は私にも二人の子供がいて幸い健常児だったのと泣く。放射能、特にセシウムが遺伝子を損傷していく恐ろしさを目の当たりする。
未熟児で生まれる子供も多い。ベラルーシの人は生まれもって機能の異常がある心臓をチェルノブイリ・ハートと呼ぶ。ベラルーシは非常に貧しいので手術を出来ないまま死んでいく子供も多い。政府にも金がないのに汚染地域であっても補償金が打ち切られてしまっていた。200人以上手術待ちで他国から来た医者に運良く手術で助かることもある。医者は助けただけだと言うが手術をした娘を持つ母親からは非常に感謝される。医者は言う、私は仕事をしただけだが、いつもああ感謝されてどうしたらよいかわからないと。
ホワイトホース
20年前にチェルノブイリで暮らしていた青年が今は立ち入り禁止地域のかつて住んでいた団地を訪ねた。当時は子供で事故が起きて赤く燃えている炉を友達と見に行って親に怒られた。既に事故が深刻な状況になっていた。3日以内に私物は一切持ち出し禁止で強制退去させられた。自分の部屋には親が貼った白い馬のポスターがあった。その時壁に貼っていたカレンダーが86年のものだった。事故がなければと悔しそうにそれを破った。
2007年にその青年も死んでいった。27歳だった。
監督の言葉、人間は生き続けないといけない。
世界には国境がある。しかし、空、海、陸上には国境がなくつながっている。青い地球は尊いというようなことが文字で流れる。
日本は復興できます。必ず。
映画は終わる。
いつになったら、何年、何十年、100年それ以上かかるかもしれない。途方もない年月が。気が遠くなった。日本政府が言う直ちに健康に影響はない、つまり急性障害はないが、晩発障害は起こり得る。一世代では終わらず何世代かにまたがって遺伝子を傷つける。放射能は手加減をしない。そのことを嘘偽りなくしっかりと映したドキュメンタリーだった。
ため息しか出ない、息が詰まりそうになった。奇形児を面倒くさそうに扱う世話係のおばさんにもっと優しくしてと監督は言う。とんでもない姿になってしまった奇形児に目をそむけたくなった。監督はその子たちを抱いて抱きしめる。その子たちには何の罪もない。同情ではなく生を受けたことを称えるように抱く。人をしっかり見つめ包み込む人だからこそこうしてカメラを向けることが出来るのだと思った。
見たくない日本の未来。でも対峙しなくてはいけない。目に焼き付けなければ。現実を。
絶対に原子力発電、核エネルギーは日本から、青い地球からなくさねばらない。
除染するよりも福島県から、原発に近くて汚染が深刻な地域からは一刻も早く完全移住させないといけない。子供だけでも、毎日そう思い不安になる。戻すのは政府の殺人行為だ。
CHERNOBYL HEART
2003年米
8月13日公開
公式サイト
PG12指定
☆☆☆☆
監督: メアリーアン・デレオ
製作: メアリーアン・デレオ
2003年度アカデミー賞ドキュメンタリー短編賞受賞
最初に今回原発事故が起こった日本のみなさんへと監督からの詩人の言葉が引用される。オリーブの木を植え続けないといけない。生き続けないといけない。
チェルノブイリ原発事故は1986年4月26日に起きた。軍を大量に投下し作業をした。何万にかの死者が出た。(数字は忘れてしまった)。ウクライナ、ベラルーシ、ロシアが放射能によって汚された。16年後、防護服を着てマスクを装着して車に乗り原発の数十キロ圏に入る。石棺はしたが、時が経ち劣化していて放射能が今も漏れ出している。村から老人がよく来たねと声をかけてきた。この地域は年寄り以外は居住が許されない地域なのだ。
ベラルーシ、セシウムで汚染された地域。病院では甲状腺ガンの手術を待っていたり、手術をした若者が入院していた。友人など甲状腺ガンにかかっている人がかないいると話す。医者は原発事故前はこんなに多くはなかったと語る。一人の少年がホールボディカウンターで体内のセシウムの量を計測する。量が多いと医者は言い、きのこ、鹿肉、ベリー類などは食べていないだろうねと家にあったベリー系のジャムを計測するとセシウムが多く検出される。
ミンスクでは奇形児が集められた病棟がある。成長しなかったり脳性麻痺があったりする子供がたくさんいて永久にそこで暮らす。また、奇形児を遺棄する親がいて引き取る施設である。奇形児の出生率がほかの周辺国の25倍に増え、健常児が生まれる確率は15〜20パーセントになりほとんどが何らかの障害を持って生まれる。原発事故の影響だろうと医師は語る。映画では言われてはいないが、その健常児もいつ病気になるかわからないということもあるだろう。
足が捻じ曲がった子供、脳が頭に収まらずに飛び出た子供、口がうまく形成できないまま生まれた子供、手足ががさがさになって切断しなくてはいけないかもしれない子供、脳に水が溜まり頭が大きくなり脳がほとんど機能していない子供、腎臓が肥大して立てない子供。子供たちにおもちゃを配る監督。この現実を見ていつも涙をこらえているのと言う女医は私にも二人の子供がいて幸い健常児だったのと泣く。放射能、特にセシウムが遺伝子を損傷していく恐ろしさを目の当たりする。
未熟児で生まれる子供も多い。ベラルーシの人は生まれもって機能の異常がある心臓をチェルノブイリ・ハートと呼ぶ。ベラルーシは非常に貧しいので手術を出来ないまま死んでいく子供も多い。政府にも金がないのに汚染地域であっても補償金が打ち切られてしまっていた。200人以上手術待ちで他国から来た医者に運良く手術で助かることもある。医者は助けただけだと言うが手術をした娘を持つ母親からは非常に感謝される。医者は言う、私は仕事をしただけだが、いつもああ感謝されてどうしたらよいかわからないと。
ホワイトホース
20年前にチェルノブイリで暮らしていた青年が今は立ち入り禁止地域のかつて住んでいた団地を訪ねた。当時は子供で事故が起きて赤く燃えている炉を友達と見に行って親に怒られた。既に事故が深刻な状況になっていた。3日以内に私物は一切持ち出し禁止で強制退去させられた。自分の部屋には親が貼った白い馬のポスターがあった。その時壁に貼っていたカレンダーが86年のものだった。事故がなければと悔しそうにそれを破った。
2007年にその青年も死んでいった。27歳だった。
監督の言葉、人間は生き続けないといけない。
世界には国境がある。しかし、空、海、陸上には国境がなくつながっている。青い地球は尊いというようなことが文字で流れる。
日本は復興できます。必ず。
映画は終わる。
いつになったら、何年、何十年、100年それ以上かかるかもしれない。途方もない年月が。気が遠くなった。日本政府が言う直ちに健康に影響はない、つまり急性障害はないが、晩発障害は起こり得る。一世代では終わらず何世代かにまたがって遺伝子を傷つける。放射能は手加減をしない。そのことを嘘偽りなくしっかりと映したドキュメンタリーだった。
ため息しか出ない、息が詰まりそうになった。奇形児を面倒くさそうに扱う世話係のおばさんにもっと優しくしてと監督は言う。とんでもない姿になってしまった奇形児に目をそむけたくなった。監督はその子たちを抱いて抱きしめる。その子たちには何の罪もない。同情ではなく生を受けたことを称えるように抱く。人をしっかり見つめ包み込む人だからこそこうしてカメラを向けることが出来るのだと思った。
見たくない日本の未来。でも対峙しなくてはいけない。目に焼き付けなければ。現実を。
絶対に原子力発電、核エネルギーは日本から、青い地球からなくさねばらない。
除染するよりも福島県から、原発に近くて汚染が深刻な地域からは一刻も早く完全移住させないといけない。子供だけでも、毎日そう思い不安になる。戻すのは政府の殺人行為だ。