2007年10月12日

「ヘアスプレー」にみる人種差別問題

アメリカに根深く残る問題のひとつに「人種差別」があります。
この問題、これまでたびたび小説や映画のテーマとして取り上げられてきましたが、このほど、また新たな視点で描いた映画が誕生し、話題を集めています。
その映画とは、今年7月にアメリカで公開され、ミュージカル映画史上ナンバーワンのオープニング記録を樹立した「ヘアスプレー」。
来週の土曜日から日本でも公開になる映画ですが、今年7月にミュージカルが日本でも上演されたので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
2002年にブロードウェイで上演され、翌年にはトニー賞13部門にノミネート、作品賞ほか8部門で受賞し、現在もロングランを続けている超人気ミュージカル。実は1987年にジョン・ウォーターズ監督が撮った映画だった。
今夜はこの映画の監督・アダム・シャンクマンさんのインタビューの模様をお伝えしました。監督になる前はアメリカのエンターテイメント界の屈指のダンサーの一人でジャネット・ジャクソンのミュージックビデオにも出ていた。コメディの振付師でアダムス・ファミリーやブギー・ナイツ。監督としては「ウェディング・プランナー」「ウォーク・トゥ・リメンバー」を撮った。

Adam Shankman












>今回の監督を受ける経緯は?

アダム・シャンクマンさん:オリジナルをプロデュースした人がスタジオの会長クラスになっていて生まれた企画でした。また、ミュージカル版がブロードウェイで成功して、その後の映画も劇場ではそれほど成功しなかったが、ビデオでは成功を収めた。私もミュージカル版が大好きで、作曲家、作詞家は長年の友達です。そのこともありやりたいと思っていた。私自身ミュージカルに出ていたし、60分くらいの映画、テレビでも振り付けの仕事をやってきていて、とにかく踊りが大好きです。ですから「ヘアスプレー」は特別な作品なんです。

内田さん:黒人差別の暗い歴史を扱っているんだけれども、単純に黒人差別だけではなく、主人公とその母親は太っている。太った人が気にして表で活動できないことから抜け出して、受け入れてくれるところが大きなテーマがある。それぞれみんながマイノリティーで受け入れられていくのが狙っているような映画かな。非常に巧みです。

>1960年代のボルティモアの時代背景について

私が64年に生まれていて、この映画が62年の設定なんです。ボルティモアの60年代は特別な年で、この映画は62年の春で終わっていますが、翌年にはJFK暗殺事件が起きる。JFKとマーティン・ルーサー・キングは人種差別撤廃をしようという活動に関わっていた。その二人が暗殺されようとしていた時代を迎えようとしていた。実はこの映画の題材はジョン・ウォーターズ監督が実例に基づいて書いている。当時、ボルティモアで人気のあったバディー・ディーン・ショーがあって、バディー・ディーンさんは黒人も一緒に出られるようにすることに最後まで反対していた。スタジオ側は逆に促進しようとしていた。結果、ディーンさんが反対してショーが終わってしまった。

内田誠さん:映画では逆になっていて。普段は白人だけのダンスショーや歌。一つの曜日をニグロ・デイとして黒人が出演者の日があった。分離、隔離というのが番組編成にまで影響していた。

>現在のオーディション映画でも差別が残っているのか?

もちろん、われわれはオーディションには差別はないというふりをしたがる。でも、だいぶ良くなってきている。踊り、スポーツの世界でも技術だけで選ぶような世界になっていると思います。ベネトンの広告、ミュージックビデオなどもバックダンサーがみんな白人だったり、みんな黒人は格好悪いというのでいろんな人種をいれるようにしている動きがある。ただ、今回の映画のオーディションでは62年、ボルティモアではアジア人は一人もいなかったし、ヒスパニック系も住んでいない事実があるので、どうしても白人、黒人に限らざるを得なかった。

内田さん:アジア系、ヒスパニック系、様々な人種が入ってきて、アメリカは少しずつ時間をかけて社会の中で消化していって、それでアメリカの強さが生まれている。それが描かれた映画だな。

>どういう時に人種差別を感じますか?

最近は普段の生活で人種差別は感じません。特に私はアフリカ系アメリカン人のアーティストと仕事もしていますし、私自身ゲイなので中流階級育ちで白人なんですが、でもマイノリティだと感じる時があります。最近、感じるのはゲット・ウィゼーション(自分たちが所属する社会的グループを守ろうとする傾向がある)。自分たちの不安を守るために守る事をしているのか。政治的な正当性、ポリティカル・コレクトというところで時代を遡っていて、言いたいことが言えなくなっていて、非常に守ろうとするような姿勢が見られる。

内田さん:政治的に差別発言をやめましょうとか言葉が狭められる事をポリティカル・コレクトと言うのでしょうが。他方で、自分たちのグループの狭いアイデンティティを主張することで社会が分断されていくのはいいことではない。そのあと、アファーマティブ・アクションが大きくなっていて、黒人が差別をされていて逆にこの人たちを優遇しましょうと。大学に入りやすくなったり。ライス国務長官も大学に入れたのはアファーマティブ・アクションがあったからとおっしゃっているくらい。逆に、多数派の白人が成績が良くても入れないという文句が起こったり。差別の小さな種はいろんなところに残っている。完全にはなくならない。

今、アメリカは非常に皮肉な状態にある。アメリカは誰にでもチャンスを与え、いろんな人が混ざっていることが謳い文句にされてきたが、今度の選挙では移民を少なくしようとしている。その境を厳しくしようとしているのが問題になっている。

内田誠さん:アメリカは国際的にも外に無関心だったり、過剰に関心を持つことでいろんな問題が起こってきている。移民を制限しようという方向にいっている。

監督はあまり人種差別というシリアスな印象は与えたくないと。確かに社会的なテーマはあるが、重くしないようにあえてユーモアを交えて説教じみた語り方はしたくなかったと。ミュージカルというジャンルは勝利であり、喜び、ユーモアを表しているんです。この映画の観客はファミリー層という事を意識して、子供も楽しめるように、歌って踊ってテーマについてディスカッションできるような映画にしたかった。

>リスナーへのメッセージ。

この映画を見に来てくれるみなさんには当時の時代背景を理解していただきたいとは思いますが、とにかく、非常に楽しめるミュージカル映画です。多くの映画スターが出演し、盛り上げています。ジョン・トラヴォルタは30年以上前の「グリース」以来のミュージカル映画。ミシェル・ファイファーは「グリース2」以来のミュージカル映画出演。歌あり踊りありのパワーに満ちた内容になっています。この映画を見て、家族の中でなぜ太っている子が出ているの、黒人の子が白人の子と踊れなかったのと話すきっかけになればと思います。社会の中でアウトサイダーと呼ばれる人たちが行動を起こして、結果世の中を変えていくということは自然なことです。とにかく、楽しめる映画なのでみなさん映画館に是非見に来てください。

内田さん:今、大統領選で民主党オバマさんがアフリカ系候補、ヒラリー・クリントンが女性。共和党の有力候補の一人はイタリア系。アメリカが変わっている中で60年代の問題をとって楽しい英を作るのは奇跡のようなこと。楽しい映画です。

(2007年10月11日J-WAVE JAM The World「15MINUTES」から)


ヘアスプレー HAIRSPRAY
2007年アメリカ
10月20日公開
公式サイト
オリジナル作品:ヘアスプレー(1988)
監督:アダム・シャンクマン(「キャプテン・ウルフ」「ウォーク・トゥ・リメンバー」「ウェディング・プランナー」)
脚本:レスリー・ディクソン(「フォーチュン・クッキー」「ミセス・ダウト」)
オリジナル脚本:ジョン・ウォーターズ(1988年映画版)
        マーク・オドネル(ミュージカル版)
作詞:マーク・シェイマン「映画「ヘアスプレー」オリジナル・サウンドトラック
作曲:マーク・シェイマン
出演:ジョン・トラヴォルタ
   ニッキー・ブロンスキー
   ミシェル・ファイファー
   クリストファー・ウォーケン
   クイーン・ラティファ
   ザック・エフロン(「ハイスクール・ミュージカル」)
   ブリタニー・スノウ
   アマンダ・バインズ
   ジェームズ・マースデン
hairspray

















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